日常 第26話(終)

脚本:あらゐけいいち、絵コンテ・演出:石立太一作監西屋太志という原作者+主力スタッフで、1/365の確率のなのサプライズ誕生日会、なのネジちっちゃい奴に変える、校長vs教頭の像対決、囲碁サッカー部の朝、ゆっこが起こす日常という名の奇跡、堅すぎるカボチャ、大将こと阪本さんと中村先生、ネジがある日常。
デフォルメ作画を多用したシンプルながらも丁寧な作画、無駄に力の入ったカボチャ割りのアクションシーン、ゆっこ・ちゃんみお・麻衣となの・はかせ・ついでに阪本というメイン6人の日常的やりとりを軸としつつ不条理でありシュールなギャグが多い脚本と、「日常」らしい魅力が詰まった最終回だった。
尤も、最終回ではあるが「いつも通り」な部分が多く、「これ本当に最終回か?」と思ってしまうような構成だったことも事実。かつての京アニ作品のように「最終回らしい最終回」を創らずに、「いつも通り」を貫くというのも「日常」らしい。
また、「みおが遊園地で財布を落とした時の貸しがある」「麻衣がはかせの為にサメの絵を描いてくる」といったような、「今までのネタの繋がり」を感じさせる脚本だったのは、半年間やってきた積み重ねみたいなものを感じさせられて良かった。「なのネジ」は、なのが最初の方から気にしていたネタな訳だし。「はかせとなののジャンケンタイム」が復活したのも何気に嬉しかったなぁ。
ちょっと残念だったのは、「今までよく出てきたのに、最終回では出番が無かったキャラがいた」こと。まぁキャラ数が多いから、全員登場させようと思ったら尺が足りなくなるし、「メイン5人(+1匹)」を集中して描くという方針もありなので、これで良かったのかもしれない。
笹原とみさとのカップル疑惑は放置だったのは少し残念だったけど、「まだ全然好きだし!」と言った後に照れてしまうちゃんみおは可愛いかった。あと、阪本の元飼い主が中村先生だったというのは意外だった。まさかこのキャラ同士が繋がるとは。意外といえば、「校長」の苗字は東雲だというのも意外だった。はかせと繋がりがあるのだろうか?
なのが「ネジ」という「自分らしさ」を受け入れ、はかせにより改造されたネジが回すことにより嬉しさを表現する終わり方は、まさかの感動的なノリで、その後のメイン6人の合唱によるED曲「旅立ちの日に」の効果もあって視聴後は妙に感慨深い気分になってしまったなぁ。
この作品全体としては、「不条理というかシュールというか、原作が持つ独特な笑いのセンスを京アニが本気出して演出したら凄いカオスなものができました」という印象だった。
アクションシーンを中心とした「京アニの無駄遣い」的作画は、どんどん暴走していく様が単純に観ていて面白かった。
また、アイキャッチや定点カメラ的な映像を挟んだ「間」演出も、この作品に独特なテンポを生み出す効果があって興味深かった。
学校組と研究所組が2クール開始時に融合していったり、意外なキャラクター同士の相関関係が出来上がっていったのも良かった。こういうキャラ同士の掛け合いは、半年間の積み上げがないと出来ないことだと思う。
「天丼ネタ」が多かったのも、「今度はどういう風なネタでくるのだろう?」と繰り返しの楽しみを出す効果に繋がっていた。個人的にお気に入りのネタは「無駄に豪華すぎる飛空船兵士達の物語」。豪華な声優陣が熱演していて、「本気の遊び」を感じさせられた。あと、何気に随所に挿入された完成度の高い「小ネタアニメ」も気に入っている。
また、以前にも書いたが、ベッタベタなネタでオチが見え見えでも、クオリティの高い演出で突っ走るという方向性はとても興味深かった。
声優陣では、なんといっても相沢舞の荒ぶる演技が素晴らしかった。確か京アニは収録の際「テスト」「ラステス」「本番」と3回演じるはずだから、相当大変だったのではないかと。よく喉が潰れないなかったなぁ……。他にも、新人を多く起用して面白い人材が大勢いたが、個人的に気になったのはフェっちゃん役の樋口結美。あの独特な声は一体なんなんだろう……。
特にドラマらしいドラマがある作品ではないが、原作がもつポストモダンギャグの面白さと、確かな技術力に裏打ちされたハイクオリティ演出は、毎回観ていて楽しめた。
スタッフの皆様、お疲れ様でした。