逆境無頼カイジ 破戒録篇 第26話(終)

藤原竜也な黒服が良い奴っぷりを発揮して、未来は僕らの手の中END!!
今まで闘ってきた一条に向かって手向けの言葉を贈ったり、四5組の友情を重んじて良い格好をみせようとするも、結局は遠藤に金をボラれて、坂崎のおっちゃんにも縁を切られる始末……。
すんなりとカイジがハッピーに終わる訳が無いと思っていたけど、至福の時間はあまりにも短かった……っ!!
カイジがこれほどまでに「人情」を重んじるというか、卑怯なことを嫌うのは、裏切られたり騙されたりしまくっているから、せめて自分だけはそのようなことをしない、と決意している部分もあるのだろうな……。石田の息子を救ったのも、かつての恩に報いる為だし。
実写版のカイジっぽい声の黒服が良い人っぷりを発揮したり、最後は焼肉とビールで乾杯して終わったりする部分は、人のエゴや黒い所醜い所を抉り出しつつも、どこか人間讃歌のかたちをとっているこの作品らしい終わり方でとても良かった。
「沼」戦ではあれほど極限状態で戦い抜いてきたヒーローが、その後普通のパチンコで熱くなってあっさりとなけなしの金を使い切っているところも、ある意味リアルに「人間」を描いているといえるのかもしれない。「英雄」で居られるのは特殊な環境下のみの話で、日常に戻ったら元の状態に戻るのが「本質」である、みたいな。
しかし、声が藤原竜也とはいえ重要な役回りが無名の黒服かよっ……と思ったのも事実。だが、考えてみれば一期の頃もラストでの重要な役回りが中村悠一声の無名の人だったので、「カイジ」はこういうものなのかもしれない。


総評としては、26話使って「地下チンチロ」と「沼戦」をやっただけという、もの凄い構成だったにも関わらず、見るものを惹きつけるパワーに溢れていた作品だった、という印象。
考えてみれば一期の頃も「限定ジャンケン」と「VS帝愛戦」をやっただけなので、アニメカイジの伝統を引き継いでいるとも言えるが、それでもひとつひとつのエピソードが長いよね。
特に「沼」戦は、文字通り「泥沼」な展開で、もう一体何回引ったら気がすむんだと言わざるを得なかった。
だがしかし、これだけの尺を費やしたからこそ描けたものがあることも事実。
カイジの原作はまだまだ続いているし、ストックもあるので、このままアニメの方も続けていって欲しい所。結局美心はEDでしか出なかったわけだし……。
作画・演出では、CGの効果的な使用が印象的であった。チンチロ篇ではサイコロ、沼篇ではパチンコ台がCGで描かれていて、独特の存在感があった。考えてみればこれらはそのエピソードの「主役」みたいなものだから、魅力的に描くのは当然なのかもしれないが。人物描写も、太い線と特徴的な絵柄を、海外外注が多い中頑張っていたのでは。この作品は原作があまりにも独特なので、アニメ化は本当に難しいと思うが、アニメ独自の魅力を出している点が多くみられて興味深かった。
アニメ独自の魅力といえば、声優陣の貢献も大きい。萩原聖人の演技は一期に続いて素晴らしかった。そして、「班チョー」ことチョーさんの怪演は忘れられない。坂崎の二又一成の演技も存在感があり、一条の浪川大輔の情けない演技も素晴らしかった。「裏の主役」こと、ナレーションの立木文彦の熱演は、もはや伝説級なのではないだろうか。
声優陣の熱演もこの作品の魅力のひとつなので、次のエピソードの配役も気になる所だ。特に美心が気になる。
次の展開があるかもしれないが、ひとまず、スタッフの皆様、お疲れ様でした。